日本語

日本語(にほんご、にっぽんご[注 1])は、主に日本国内や日本人同士の間で使われている言語である。日本は法令によって公用語を規定していないが、法令その他の公用文は全て日本語で記述され、各種法令において日本語を用いることが定められ、学校教育においては「国語」として教えられるなど、事実上、唯一の公用語となっている。

使用人口について正確な統計はないが、日本国内の人口、および日本国外に住む日本人や日系人、日本がかつて統治した地域の一部住民など、約1億3千万人以上と考えられている。統計によって前後する可能性はあるが、この数は世界の母語話者数で上位10位以内に入る人数である。

日本で生まれ育ったほとんどの人は、日本語を母語とする[注 2]。日本語の文法体系や音韻体系を反映する手話として日本語対応手話がある。

2017年4月現在、インターネット上の言語使用者数は、英語、中国語、スペイン語、アラビア語、ポルトガル語、マレー語に次いで7番目に多い。

特徴

日本語の音韻は、「っ」「ん」を除いて母音で終わる開音節言語の性格が強く、また標準語(共通語)を含め多くの方言がモーラを持つ。アクセントは高低アクセントである。

なお元来の古い大和言葉では、原則として。

などの特徴があった(「系統」および「音韻」の節参照)。

文は、「主語・修飾語・述語」の語順で構成される。修飾語は被修飾語の前に位置する。また、名詞の格を示すためには、語順や語尾を変化させるのでなく、文法的な機能を示す機能語(助詞)を後ろに付け加える(膠着させる)。これらのことから、言語類型論上は、語順の点ではSOV型の言語に、形態の点では膠着語に分類される(「文法」の節参照)。

分布

日本語は、主に日本国内で使用される。話者人口についての調査は国内・国外を問わず未だないが、日本の人口に基づいて考えられることが一般的である。

日本国内に、法令上、日本語を公用語ないし国語と定める直接の規定はない。しかし法令は日本語で記されており、裁判所法においては「裁判所では、日本語を用いる」(同法74条)とされ、文字・活字文化振興法においては「国語」と「日本語」が同一視されており(同法3条、9条)、その他多くの法令において、日本語が唯一の公用語ないし国語であることが当然の前提とされている。また、法文だけでなく公用文はすべて日本語のみが用いられ、学校教育では日本語が「国語」として教えられている。

日本では、テレビやラジオ、映画などの放送、小説や漫画、新聞などの出版の分野でも、日本語が使われることがほとんどである。国外のドラマや映画が放送される場合でも、基本的には日本語に訳し、字幕を付けたり声を当てたりしてから放送されるなど、受け手が日本語のみを理解することを当然の前提として作成される。原語のまま放送・出版されるものも存在するが、それらは外国向けに発表される前提の論文、もしくは日本在住の外国人、あるいは原語の学習者など限られた人を対象としており、大多数の日本人に向けたものではない。

音韻体系

日本語話者は普通、「いっぽん(一本)」という語を、「い・っ・ぽ・ん」の4単位と捉えている。音節ごとにまとめるならばのように2単位となるところであるが、音韻的な捉え方はこれと異なる。音声学上の単位である音節とは区別して、音韻論では「い・っ・ぽ・ん」のような単位のことをモーラと称している。

日本語のモーラは、大体は仮名に即して体系化することができる。「いっぽん」と「まったく」は、音声学上はであって共通する単音がないが、日本語話者は「っ」という共通のモーラを見出す。また、「ん」は、音声学上は後続の音によってなどと変化するが、日本語の話者自らは同一音と認識しているので、音韻論上は1種類のモーラとなる。

日本語では、ほとんどのモーラが母音で終わっている。それゆえに日本語は開音節言語の性格が強いということができる。もっとも、特殊モーラの「っ」「ん」には母音が含まれない。

子音体系

子音は、音韻論上区別されているものとしては、現在の主流学説によれば「か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ行」の子音、濁音「が・ざ・だ・ば行」の子音、半濁音「ぱ行」の子音である。音素記号では以下のように記される。ワ行とヤ行の語頭子音は、音素 u と音素 i の音節内の位置に応じた変音であるとする解釈もある。特殊モーラの「ん」と「っ」は、音韻上独立の音素であるという説と、「ん」はナ行語頭子音 n の音節内の位置に応じた変音、「っ」は単なる二重子音化であるとして音韻上独立の音素ではないという説の両方がある。